飲食業界の中でもさらにブラックなイメージの料理人(調理師)。ブラックなイメージを認めざるを得ない理由が存在します。
この記事の読者は以下のことを考えたことがあるのではないでしょうか?
しかし、料理人(調理師)には多くの魅力もあると感じています。
10年間厨房に立つ現役シェフとしての視点で料理人(調理師)がブラックな働き方になってしまうのかを解説します。
この記事を読めば、料理業界のブラックな部分と、これからの改善される料理業界について知ることができます。
料理人・調理師がブラックな理由
ブラックな理由1.拘束時間が長い 平均11時間
料理業界では、一般的に長いシフトが一般的で、11時間以上は当たり前です。
特に忙しいレストランでは、シフト中に休憩を取ることが難しいことがあります。
拘束時間が長い理由
- 料理のクオリティーを追求するあまり、仕込みの工数を考えず料理を構築する。
- 利益を優先するあまり従業員に負荷をかける営業時間を設定している。
- 料理業界の人員不足も影響し、少人数で多くの仕事をこなす必要があるため残業時間が超過する。
ブラックな理由2.給与が低い
料理人(調理師)の平均年収は以下のとおりです。
A | B | C | D | |
---|---|---|---|---|
平均年齢 | 月額給与 | 年間賞与 | 平均年収 | |
統計データ | 45.8歳 | 260,600円 | 268,000円 | 3,395,200円 |
日本の平均年収443万円と比較すると給与が少なくなっています。
料理人・調理師全体の平均年収はこちら⇓の記事で解説しています。
雇われ料理人・調理師で年収1000万は不可能!現実的に狙える年収は?
年齢別、地域別、性別別に区分して具体的な平均を確認できます。
給料が安い理由
飲食店は利益が10%が基本
飲食店の標準的な収益構造のモデル。
人件費の比率を上げることはリスクが高いため給与額が上がりにくい傾向にあります。
ブラックな理由3.賞与がない
ボーナスを支給する飲食店は増えているものの、現状ではほぼないものと思って間違いありません。
2023年に料理人を対象に行った調査では、以下の結果が出ています。
料理人・調理師のボーナス支給額 | 割合 |
---|---|
0円 〜 5万円 | 60% |
5万円 〜 6万円 | 25% |
6万円以上 | 13% |
その他 | 2% |
この表は、各ボーナス支給額の割合を示しています。
5万円から6万円までの範囲が25%を占めているため、やや高いボーナスを期待できる一方で、6万円以上の支給額が13%となっているため、一部の経験豊富な料理人にとっては、それなりのボーナスが見込めるでしょう。
ブラックな理由4.有給取得ができない
人員不足により厨房スタッフに欠員が出た際、他のメンバーに負荷を与えてしまいます。
有給消化をしない想定の人員配置をしている飲食店もあります。
厚生労働省による令和3年就労条件総合調査によると、飲食・宿泊業の有給休暇取得率は45.0%で、他の産業と比べて最下位になっています。
ブラックな理由5.社会的に孤立しやすい
料理人が社会的に孤立しやすい理由は、以下の点が挙げられます。
料理人調理師が社会的に孤立する原因
・働く時間が長く不規則
・仕事が孤立を生む
・業界の特有の文化と社交の難しさ
働く時間が長く不規則
料理人は通常、朝から深夜まで働き、週末や祝日も仕事があります。そのため、家族や友人との時間が制限され、他の人とつながりにくくなります。
仕事が孤立を生む
料理人は主に一人で調理作業をすることが多く、孤独感を感じやすいです。これが他の人との連携を難しくし、孤独につながります。
業界の特有の文化と社交の難しさ
料理業界には独自の文化やヒエラルキーが存在し、他の業界とは異なる社交構造があります。
他の社会的なグループとの交流を難しくし、孤立感を生み出します。
※ヒエラルキーとは
物事や情報が階層的な構造を持つことを指します。上位と下位の関係があり、組織、ファイルシステム、生態系などさまざまなコンセプトで見られます。階層構造は整理された形で情報や要素を配置し、理解しやすくする役割を果たします。
ブラックな理由6.肉体的にきつい
長時間労働を行う料理人には身体的な負担も大きくのしかかります。
立ち仕事で重いものを持つことが多くあることが原因です。
料理人・調理師が抱える体の不調
体の不調 | 説明 |
---|---|
腰痛 | 長時間立ちっぱなしや重い調理器具の使用による影響。 |
肩こり | 料理中の姿勢や調理作業の繰り返しにより発生することが多い。 |
手首の痛み | 繰り返しの包丁さばきや重い鍋の取り扱いが原因で発生することがある。 |
眼精疲労 | 調理中の集中作業や包丁仕事により、目に負担がかかる。 |
頭痛 | ストレスや忙しい厨房環境が原因となることがある。 |
足の疲労 | 長時間の立ち仕事により、足に負担がかかり疲れやすい。 |
運動不足 | 忙しい料理人の生活では、十分な運動が難しいことがある。 |
栄養不足 | 調理中に忙しさから十分な食事を摂ることが難しく、栄養バランスが崩れることがある。 |
睡眠不足 | 遅い閉店や早い朝の仕込みなどが影響し、十分な睡眠がとれないことがある。 |
ストレス | オーダーテンポや忙しさ、料理のクオリティへのプレッシャーが原因で、ストレスを抱えることがある。 |
体調の管理は重要であり、予防策や適切なケアが必要です。
ブラックな理由7.精神的なストレスを感じやすい
精神的ストレスを感じやすい理由
- 時間に追われながら仕事をし続ける。
- 閉鎖的な空間での上司や部下との人間関係。
- 収入の少なさによる将来への不安。
- 土日固定休みの友人とのギャップ。
時間に追われながら仕事をし続ける
料理人の日々は緊張感に満ちており、特にランチやディナーのピークタイムではオーダーが殺到します。
具体的な体験として、スムーズな調理が追いつかない瞬間に、注文が重なり、調理師たちがチームとして息を合わせながら厨房を駆け巡る様子が挙げられます。
閉鎖的な空間での上司や部下との人間関係
厨房は狭く、高温で、ストレスが蓄積しやすい場所です。
同僚たちとの連携が円滑でないと、料理が滞り、ムードが悪くなることも。
実際のコミュニケーションの難しさや、緊張感の中での人間関係の影響がストレスとなります。
収入の少なさによる将来への不安
収入の少なさによる将来への不安は、料理人たちにとって切実な問題です。
経済的プレッシャーを軽減するため、スキル向上や新しい料理の開発に取り組むことが求められています。
具体的な例として、新しいメニューの導入やイベントでの料理コンペティションへの参加が挙げられます。
土日固定休みの友人とのギャップ
週末に休むことが難しいため、友人たちが集まるイベントやレジャーに参加できないことがあります。
具体例として、週末に開かれる友人の結婚式や誕生日パーティーに参加できないことが、料理人たちの生活におけるギャップとなり、心理的なストレスを増加させることが考えられます。
ブラックな理由8.残業代の支払いがない場合が多い
筆者が10年以上料理人として働く中で1度も残業代をもらったことがありません。
ブラック企業が多い飲食業界では、当たり前になっている現状があります。
現在は組織の働き方の見直しを図り、従業員に残業代の支払いをする仕組みを作れています。
ブラックな理由9.強烈な縦社会の文化が残っている
縦社会文化のしくみは以下の要素で構成されています。
- ハードな労働環境と厳しい評価基準
- 伝統と職人気質の尊重
- 生産性とチームワークの追求
ハードな労働環境と厳しい評価基準
料理業界は常に高いプレッシャーのもとで働くことが求められ、長時間かつ過酷な労働が一般的です。
良い料理を提供するためには非常に優れた技術力やクリエイティビティが求められる。
合格の基準は厳格であるため、上下関係が強調される要因となっています。
シェフや上級料理人の指導のもとでの修行が、縦社会的な構造を形成する一因です。
伝統と職人気質の尊重
料理は伝統と職人気質が重要視される職種であり、これが縦社会的な文化を形成しています。
師匠と弟子の関係が重要視され、経験豊富な料理人が後進を指導することが一般的です。
この伝統的な師弟関係が、厨房内での階層構造を強調し、指導者に対する敬意や服従が求められる原因となっています。
生産性とチームワークの追求
料理現場ではタイムリーかつ効率的な仕事が求められ、これが上下関係を強調する一因となります。
ハイペースでの調理作業やストレスの多い状況下での作業を円滑に進めるためには、特定の指導者の元で統一された指示に従うことが必要です。
チーム全体がリーダーシップに従い、個々の責任を果たすことが期待され、縦社会の文化が根付いています。
やめたい時に辞めても料理人・調理師はOK
以下の理由で料理人・調理師は転職回数に拘る必要がありません。
辞めても大丈夫な理由:需要の安定性
食べることは不変の需要であり、これに対応する形で飲食業界も拡大しています。
実際に、新しい飲食店がオープンするたびに料理人や調理師の需要が生まれ、積極的に求人募集が行われています。また、食事配信サービスやフードトラックの人気も相まって、多岐にわたる雇用機会が提供されています。
詳しくは➡【注意点あり】料理人・調理師の将来性は高い!AIが普及してもなくなることはない。
辞めても大丈夫な理由:多様な雇用先
料理人や調理師は様々な業界で活躍できます。たとえば、レストランでの経験を積んだ後、ホテルのシェフや企業の専属料理人として転職することができます。
料理番組の制作スタッフや食材メーカーの研究開発など、料理のスキルを応用できる職場も豊富です。
詳しくは➡【20代.30代必見】飲食から未経験業種に転職する方法。転職しやすい業種5選
辞めても大丈夫な理由:実力主義の業界
料理業界は実力が最も重要視される分野の一つです。
例えば、新しい料理のアイディアや特別な技術を身につければ、自身の料理スタイルを確立し、その実績が転職先でのポジション獲得に繋がります。
辞めても大丈夫な理由:挑戦と創造性
料理人は常に新しい挑戦に取り組むことが求められます。例えば、特定の食材や調理法にこだわるレストランから、シーズンごとにメニューを変更する場所までさまざまなスタイルがあり、自分の好みや興味に合った場所で働くことができます。
創造性を発揮し、お客様に新しい味わいを提供することが重要とされています。
辞めても大丈夫な理由:国際的な経験
料理の世界は国際的であり、異なる文化や料理スタイルに触れる機会が豊富です。
例えば、日本の伝統料理に携わった後、他の国で学び、異なる料理文化を取り入れることで、個々のキャリアに独自性を加えることができます。
私は10年間で6回転職をしていますが全く問題ないです!
底辺料理人・調理師だと思ったら環境を変える
料理人・調理師は自分の輝ける環境に身を置くことが最も重要です。
ハラスメントが横行する職場ならすぐに辞めてしまうべきです。
飲食業界は労働環境を諦めている空気感ではありますが、労働環境の改善に力を入れている企業も存在します。
▶︎【再現可能】料理人・調理師がホワイト企業に転職する方法!注意点あり
底辺料理人・調理師から抜け出すためには転職が必須
転職を行う際、最も注意したいことが職場選びです。
上記の失敗は自分一人の力で転職活動を行ったことが原因の場合が大半です。
人生を大きく変える転職を成功させるためには転職支援サービスを利用することをオススメします。
底辺から抜け出せる転職エージェント比較
転職エージェントには多くの種類があり、選ぶことが難しく感じてしまいます。
筆者も例外なく迷っていた時期があり、転職活動に遅れを取りチャンスを無駄にした経験がありました。
以下で紹介している転職エージェントは、筆者が実際に利用し信頼の置ける業者のみをピックアップしています。
順位 | エージェント名 | 総合点 満点/35 | こんな人に オススメ | 解説記事 | 求人数 | 求人の質 | エージェントの質 | 独自の特徴 | レスの速さ | 実績 | 口コミ |
1位 | 34 | 履歴書を丸投げで作って欲しい。 年収アップを目的に転職する。 年収400万円以上を狙いたい。 エージェント選びに迷っている。 | フーズラボの口コミと評判 | ★★★★★ 25329件 | ★★★★★ 最高 | ★★★★★ 最高 | ★★★★★ 書類作成代行 | ★★★★☆ | ★★★★★ No.1多数 | ★★★★★ 詳細 | |
2位 | 29 | 多くの求人が見たい。 | クックビズ口コミ評判 | ★★★★★ 30000件 | ★★★★☆ 良い | ★★★★☆ 良い | ★★★☆☆ なし | ★★★★☆ | ★★★★★ 老舗安定感 | ★★★★☆ 詳細 | |
3位 | 27 | ブライダル業界のみを狙って転職する。 | 飲食転職なびの口コミ評判 | ★★★★☆ 約800件 | ★★★★★ 最高 | ★★★☆☆ 普通 | ★★★☆☆ なし | ★★★★☆ | ★★★★★ | ★★★☆☆ 詳細 | |
4位 | 26 | マイナーエージェントが良い。 | キャリアメニューの口コミ評判 | ★☆☆☆☆ 非公開 | ★★★★☆ 良い | ★★★★☆ 良い | ★★★★★ 転居サポート | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★★★☆ 詳細 | |
5位 | 25 ※ホテルのみ | ホテルのみを狙って転職する。 | おもてなしHRの口コミ評判 | ★★★★☆ ※ホテルのみ | ★★★★☆ 良い | ★★★★☆ 良い | ★★★☆☆ なし | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | ★★★★☆ 詳細 |
筆者が実際に利用し本当に良かったエージェントのみをピックアップしています。
詳しくは➡飲食業界の転職エージェント・サイトおすすめ5厳選!項目別ランキング
特にランキングの1位は必ず登録したい転職を考える方に必須のエージェントです。
料理人・調理師は底辺だからやめとけと言われた方へ
ブラックな原因が多くある料理業界ですが、変わりつつあることも事実です。
料理業界に以下の4つの変化がおとずれます。
人員配置の変化
現在は1店舗に料理長が1人いるというのが一般的です。
しかし今後の料理業界では、複数店舗に料理長が1人になっていきます。
現在も大手企業ではこの人員配置を取り入れており、料理長の人件費コストを複数店舗で分割することにより、スタッフの給与アップに繋げています。
料理業界の人員不足問題を改善するために、業界として給与の底上げを行う組織づくりが行われていきます。
柔軟な労働環境
社会の流れに遅れながらも料理業界も変わり始めています。
有給消化の義務化や、労働時間の上限の設定など規制が厳しくなり、企業として優先的に問題解決をする課題となっているからです。
実際、筆者のレストランでは、保育園の送り迎えの時間の確保や、希望休を取得するために全メンバーが全ポジションを担当できるよう設計し、柔軟な労働環境が実現しています。
柔軟な働き方ができる業態
テクノロジーの進化による勤務時間短縮
調理機器の進化が猛スピードで進んでいます。
時間短縮や、業務効率を上げる機器が多く、人間の働く時間を短縮してくれます。
現在問題となっている労働時間の長さが改善される日も遠くないと考えます。
詳しくは➡料理人・調理師の将来性は高い!AIが普及してもなくなることはない。
SNSのつながり
今まで過酷な労働環境に身を置く料理人は情報が閉鎖的になっていました。
しかしSNSの普及により、取得できる情報量が多くなっています。
SNSを使って自分のブランドを構築し、個性やスタイルを強調することができます。
これにより、他の料理人との差別化が可能になっています。
料理人・調理師がブラックな理由まとめ
料理人・調理師がブラックな理由9選
- 拘束時間が長い: 料理業界では平均で11時間以上の長時間労働が一般的であり、休憩を取ることが難しい状況がある。これは料理のクオリティー追求や人員不足に起因しています。
- 給与が低い: 料理人の平均年収は一般の平均年収に比べて低い。飲食店の利益構造や人件費の割合が上がりにくいことが給与の低さに影響しています。
- 賞与がない: ボーナス支給が一般的ではなく、経験豊富な料理人でも高額なボーナスがもらえる割合は限られている。
- 有給取得が難しい: 飲食業界では有給休暇の取得率が低く、人員不足により休暇をとりにくい状況がある。
- 社会的に孤立しやすい: 料理人は長時間の不規則な労働時間や閉鎖的な厨房環境、業界特有の文化が影響して社会的な孤立感を感じやすい。
- 肉体的な負担が大きい: 長時間の立ち仕事や重い調理器具の使用により、料理人は身体的な不調を抱えることがある。
- 精神的なストレスが高い: 厨房での高いプレッシャーや人間関係の難しさ、収入の不安などが料理人たちに精神的な負担を与えている。
- 残業代の支払いがない: 飲食業界では残業代が支給されないことが一般的であり、ブラック企業が存在する。
- 縦社会の文化が残っている: 料理業界は伝統や職人気質が強く、ハードな労働環境や厳しい評価基準、縦社会的な組織文化が根付いている。
コメント